『コーヒーの鬼がゆく 〜吉祥寺「もか」遺聞〜』


コーヒーの鬼がゆく―吉祥寺「もか」遺聞

一杯のコーヒーに人生の全てを捧げ、焙煎機の前で倒れ、リハビリの甲斐無く一昨年末に逝去した吉祥寺「もか」店主 標(しめぎ)交紀(ゆきとし)氏の物語。 同じ吉祥寺に事務所をおき、氏の最晩年のコーヒーに触れる機会を得たのは、私にとって大変な幸運で、そして井の頭公園からゆるやかに登る坂の途中にある「もか」に赴き、静かな店内でお願いした豆を氏が(あるときは、奥様が)ビニール袋に詰めてくれる短い心落ち着く時間と、コーヒーの香りの染みこんだ店内の空気を今でも明確に思い出すことができます。

「もか」を出て、坂を上りきって少しいったマンションの一室の事務所に一人戻り、封を開けた時の香り、それから静かに抽出したコーヒーを味わう、私にとっては、まさに至福と言って良い時間でした。

標氏のコーヒー自家焙煎店店主としての生涯を追う形式をとりつつも、ところどころに著者のメッセージが強く出てしまっていて、淡々と氏の人生をトレースしたいと思う私の様な読者にとっては少々読みにくい箇所もありました。 また、一部には評判となっているコーヒー店店主とジャズミュージシャンとの相似を楽しむ箇所は、一時ジャズを真剣に演奏すべく努力した私にとってはあまり面白い文章では無かったです。

それでも、本書に引用されている標氏の語録を読むだけでも価値があると思います。 コーヒー好きの方にはとてもお勧め。


訳あって、できるだけ短く書評を書いてみようと思っています。(目標は200字前後) これは第一弾。 下手な文章にお付き合い頂ければ幸いです。 次は宇都宮徹壱氏の「股旅フットボール」の予定です。

Posted on Monday, January 26th, 2009 at 4:09 AM. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can leave a response, or trackback from your own site.

Leave a Reply